haiku(2011-06-23)から転載

next49.hatenadiary.jp

next49氏による「発言の形式に着目して比較的まともそうな情報発信者を見つける方法」。

一言でいうと「他者が検証しやすい形で情報を提供している人はまともな可能性が高い」と考え、どんなに偉い人、実績のある人でもこの条件を満たしていない人はとりあえず、退けておけば良いと思います。

本文には具体的な9項目のチェックリストがある。まとめると:主張の根拠となる観測結果の提示があること。その観測に関して、観測方法について記載と、標準的な観測方法と結果の解釈の記述があること。観測結果から標準的に導かれる結論と、自分独自の主張が区別されていること。

ある主張が主張として成立つには、すくなくとも根拠と主張の間に必要条件が満たされている必要がある。そうじゃなきゃ、納得する余地がない。問題なのは、その主張が十分条件も満たしているかどうか、が、しばしば検証されないことなんではないか。

こないだ学校で習ったのは「ヒトは帰納的に物事を考えがちで、しかもそれを実証的に検証しようとしない。また、論理学上の形式的真偽判断が苦手で、実際の判断における優先順位が低い」てなことだったような。つまり「論理性よりも事実性(それを事実だと思っているかどうか)が真偽判断に優先的に適用される」らしい。

だから「難しいことはよく分からないけど、そうなんじゃないかと思っていたのと同じことを○○さんも言ってたから、きっとそうなんだ」というのが、よくある判断のかたちであるらしい。そして、人の話を聞いて「やっぱりそうなんだ」と思うのは、「えっ、違うんだ」と思うより気持ちいいんじゃないか?既に持っている価値観(事実性判断)を強化するのはたやすいけれど、それを変更するのはけっこう抵抗感がある。自分の事実性判断に反する事例を突きつけられたら、その場合は十分条件を検討して、アラが見つかればその事例にケチを付けて自分の判断を維持しようとする。もしその試みがうまく行かなくても、だからといってあっさり自分の判断を変更するのは難しいよね。なんだかんだと言い訳しながらその判断を維持できる道がないか探しちゃうかも。でも、合致する事例に遭遇したら、十分条件の検討なんか一切しなくて「ほら、やっぱりそうじゃん」って思って終わりだよね。

なんでそうなのかは分からないけど、ヒトは自分の信念を常に強化したい、と、思ってるんだよ。だから、「聞きたい話だけ聞く」ということになるんだ。

で、そういうやり方じゃ、それが本当に正しいかどうかが分からない、というこを知っている人は、それを解決する方法のひとつとして、「人にケチをつけてもらう」ということをしてもらうんじゃないか。「いろんな人にケチをつけられても耐えうる主張はそれなりに正しい」というのを、それが正しいかどうかの基準にする。

なんでそうすると正しいかどうかが分かるかというと、元記事の「他者が検証しやすいということは何故重要か?」の項にあるように、ある主張に含まれる誤りの根源は、「人は間違える」し「自分の見たい物しか見ない」という性質にあるから。「ヒトは自分の信念を常に強化したい」のだ。だから、自分の主張の誤りは自分で見つけるのは難しい。他人に見つけてもらうほうがずっと簡単だ。

だから、他人にケチをつけてもらう、その主張が満たさない十分条件を見つけてもらう、そういうことを、なるべくたくさんの人にしてもらう。それでやっと、その主張の正しさが保証されてくる。

で、それを人にお願いするために、その検証に必要な情報を使いやすいかたちで提供する。それをしている人は、その行為の価値を知っている人。何が本当に正しいかがどうやって保証されるかを知っている人。だから、そういうことをしている人は、本当に正しいのが何かを知ろうとしている、でもそれは自分だけでは難しいと知っている賢明な人だ。

対して、必要な情報を出さない人、主張の根拠がどこにあるのかを明確にしない人は、自分の主張の正しさの根源が他人の検証によっているとは思っていない人。自分の中だけで、帰納的に積み上げた論理だけによって、主張する人。本当に何が正しいのかは自分だけで分かると思っている、ヒトの本能に従っているだけの人。

そして、与えられる主張のどれが本当に正しいのかを判断しなければならない我々だって、構図はまったく同じだ。その主張が自分の価値観と合致する/しないと言って無批判に受入れたり拒否したりしてるようでは、真実にはたどりつけない。

ヒトの判断というのが実際にどのようなものなのか、ということが解明されて、どういう場合にどう対応すべきか、どういう心理が真実への道を阻んでいるのか、そういうことが分からないと、多分、どうすれば良いのかは分からない。当面は、例えばnext49氏の提案のような実際的な方法をこなして行くしかないんだろう。

『なぜ「なぜ堀江は有罪になったのか」が分からないか』 この記事に書いてあるのも、科学技術じゃないけど、構図はまったく同じだよね。業界の標準を知らないと、十分条件について考察することができないので、うまいこと加工された情報に基づく主張にシロウトは簡単にやられちゃうと。